胃は、食物を貯留し柔らかく消化する機能を持っており、消化された食物は小腸で吸収され栄養となります。胃の手術を行った場合、程度の差はありますがこの機能が損なわれることになります。このため胃癌の治療においては、慎重に手術適応を決めなければなりません。胃癌では腫瘍が発生した部位や進行程度によって治療方法が異なります。腫瘍が胃粘膜にとどまる早期癌では、手術をしないで胃内視鏡を用いて腫瘍を切除する内視鏡的粘膜切除術が可能です。しかし内視鏡的治療が困難な早期癌や進行癌では、傷が小さく身体への負担が少ない腹腔鏡下手術を行っています。できるだけ機能温存手術(胃切除範囲の縮小・噴門の温存・大網の温存など)を行い術前の胃の機能を残すようにしています。腹腔鏡手術が困難な場合は、開腹手術を行って根治性と安全性を得られるように努力をしています。また高度に進行し手術の適応にならない胃癌では、通常の抗がん剤に加えて分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤を用いた多剤併用療法を積極的に行っています。当科ではひとりひとりの患者さんに即した最適な治療を提供できるよう、全ての胃癌手術症例についてカンファレンスで話し合い治療方針を決定しています。