新しい胆石手術について

1987年フランスで胆嚢摘出術が腹腔鏡で初めて行われました。腹腔鏡手術は従来の開腹手術に比べ、傷が小さいため、術後創痛の軽減、早期の社会復帰などの利点が多く、今では胆嚢を切除する方法は腹腔鏡が第一選択となっております。当科では更なる低侵襲を提供するため、新しい腹腔鏡下胆のう摘出術を紹介しております。

 

単孔手術

1個の腹壁の孔から手術を行います(お臍に孔を開けます)。整容性の利点があり、満足度が高いことが報告されております。少しお臍の形が変わりますが、手術創としてはあまり目立ちません。通常の腹腔鏡下胆のう摘出術(4孔法)より15分ほど手術時間が延長するデメリットがあります。合併症はほとんどなく、通常法と変わりありません。

ベリーダンサーに施行した単孔手術後の写真(臍から手術)


NOTES

ノーツ手術と言います。

NOTESとは、Naturel Orifice Transluminal Endoscopic Surgeryの略で、日本語に直すと“自然開口部経管腔的内視鏡手術”となります。この手術は腹壁に傷をつけずに、もともと開いている生体の自然孔(口、肛門、膣、尿道など)を通じて内視鏡を挿入し、腹腔内を観察または手術を行い、摘出手術であれば、自然孔から摘出するというものです。手術後の痛みはおなかの傷の大きさに比例します。傷が大きければそれだけ術後の創痛は強くなります。そのため、腹壁に傷をつけないNOTESは従来の腹腔鏡手術に比べ、より低侵襲の手術と期待されています。当科では、このNOTESの概念を取り入れつつ、より安全性を追求するため、腹腔鏡と併用し、Hybrid NOTESとして行っております。この手術では、腹壁の傷は5mm+2mm+2mmで従来の腹腔鏡下胆嚢摘出術の傷の1/3以下になります。

実際、手術を受けられた方からは、“全然痛くなかった”、“この傷でできると思わなかった”などの声を拝聴しております。驚いたことに、退院時(手術翌日)に処方されていた鎮痛薬を1回も飲まなかった方が3割程度いらっしゃいました。経腟アプローチを行っていますので、女性限定であること、炎症性変化の少ない状態が適応となるなど、安全性を考慮した基準がありますので、興味のある方は、外科の外来にご相談ください。

当科では、胆嚢を切除する腹腔鏡下胆嚢摘出術の方法は、①従来型、②単孔手術、③Hybrid NOTESから選択していただくことになります。

NOTES手術術後の写真(臍下5㎜、右上腹部に2㎜・2か所)

雑誌の紹介

NOTES手術とそれ以外(単孔・従来型を含む)の術後創痛について(雑誌:手術202111月号に我々の結果が掲載されました)。術後の痛みが他手術にくらべ軽減しているのが分かります。