胆石症について
1.はじめに
胆石症(たんせきしょう)は、胆のうや胆管といった胆道(たんどう)と呼ばれる消化器官に石のような固まり(胆石)ができる病気です(図1)。胆石ができても無症状のまま経過することもありますが、突然激しい腹痛を起こしたり、炎症を伴って発熱を生じたりすることがあります。日本人の約10人に1人が胆石を持っているといわれており、中高年の女性に多く見られます。
胆石は胆汁(脂肪の消化を助ける消化液)の成分が何らかの原因で固まってできたものです。胆石の位置や大きさ、動きによって症状の出方が異なります。胆のうの中にあるだけであれば無症状のこともありますが、胆石が胆管に移動して詰まると、激しい痛みや黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)を引き起こすこともあります。
胆石症は、近年では腹腔鏡という内視鏡を使った手術で体への負担が少なく安全に治療できるようになってきました。一方で、無症状の胆石に対しては、経過観察を選ぶケースも少なくありません。ここでは、胆石症についての基礎知識から検査、治療、日常生活での注意点までを詳しくご紹介します。

図1:胆石のできる場所とその名称(日本臨床外科学会HPより転載)
2.胆石の種類
胆石にはいくつかの種類があり、成分の違いによって分類されます(図2)。主に「コレステロール結石」「色素結石」「混合型結石」に分けられます。これらは、それぞれにできる原因や発生しやすい背景が異なります。
コレステロール結石は、胆汁に含まれるコレステロールが固まってできるもので、日本人の胆石の大半を占めています。女性や肥満の人、高脂肪の食生活をしている人に多く、ホルモンの影響が関係しているともいわれます。比較的淡い黄色をしており、胆のう内にできることが多いです。
色素結石は、ビリルビンという赤血球の代謝産物からできる黒い石で、肝臓病や溶血性貧血などの基礎疾患がある人に見られることがあります。また、胆道感染や胆管狭窄など、胆管系に問題がある場合に胆管内にできやすいです。
混合型結石は、コレステロールや色素成分などが混じり合ってできたもので、成分の割合や構造によって症状や治療方針が変わることもあります。
胆石の種類を特定することは、治療方針の決定や再発予防において重要です。必要に応じて、手術や検査の結果から胆石の性状を確認することがあります。

図2 色々な胆石(日本臨床外科学会HPより転載)
3. 胆石の原因とリスク因子
胆石ができる原因はさまざまですが、大きく分けて「胆汁の成分バランスの崩れ」「胆のうの働きの低下」「胆道系の炎症や感染」などが挙げられます。胆汁は主にコレステロール、胆汁酸、ビリルビンなどで構成されており、これらの成分が一定のバランスで溶け合っていることで液体の状態が保たれています。このバランスが崩れ、コレステロールが過剰になったり、胆汁の流れが滞ったりすると、結晶が生じ、それが胆石へと成長します。
胆石症のリスク因子として特に重要なのが、生活習慣や体質です。以下のような方は特に注意が必要です。
- 肥満・高脂肪食
- 女性・妊娠中・閉経後のホルモン療法中
- 急激な減量や絶食
- 高齢者
- 糖尿病・肝疾患・溶血性貧血
また、家族に胆石症の方がいる場合は、体質的に胆石ができやすい可能性もあります。
4.主な症状
胆石症は、その石の位置や大きさ、数によって症状の現れ方が異なります。無症状で経過することも多く、健康診断の超音波検査で偶然発見されることも少なくありません。しかし、胆石が胆のうの出口や胆管に詰まると、典型的な胆石発作を起こすことがあります。
もっとも代表的な症状は、右上腹部の突然の激しい痛みです。痛みは背中や右肩、胸部にまで放散することがあり、1〜数時間続いた後に軽快することもあります。脂っこい食事の後に起こることが多いです。
その他に見られる症状としては、吐き気や嘔吐、発熱(胆のう炎を合併した場合)、黄疸、体のだるさなどが挙げられます。

図3 胆石発作
5.検査方法
胆石症の診断には、画像検査が非常に重要です。もっともよく用いられるのが腹部超音波(エコー)検査で、非侵襲的かつ簡便に胆石の有無や胆のうの状態を確認できます。
【その他の検査】
- CT検査:膵臓や肝臓の評価も可能
- MRI(MRCP)検査:胆管・膵管を詳しく描出
- 血液検査:炎症や肝機能、ビリルビンなどの評価
- ERCP:胆管結石の治療も兼ねる
これらの検査を組み合わせて、正確な診断と治療方針の決定を行います。
6.治療法
胆石症の治療は、症状の有無と合併症の有無によって方針が変わります。
【無症状の場合】
- 経過観察が原則です。
【症状がある場合】
- 薬物療法:鎮痛薬、胆汁酸製剤
- 外科的治療:腹腔鏡下胆のう摘出術が主流
- 内視鏡的治療:胆管結石にはERCP+ESTで除去
治療の選択は、症状の重症度、胆石の種類・位置、全身状態などを考慮して決定されます。
7.日常生活の注意点
胆石症や術後の再発を防ぐには、日常生活の見直しが重要です。
【食事】
- 脂肪分を控える
- 食物繊維を多く摂る
- 急激なダイエットを避ける
【生活習慣】
- 適度な運動
- 体重管理
- 水分摂取を意識
手術後は数日〜2週間で回復しますが、主治医の指示に従って徐々に日常生活に戻してください。
8.よくあるご質問(FAQ)
Q1.胆石があると言われましたが、手術は必要でしょうか?
➡ 無症状なら基本的に経過観察です。ただし、充満型結石という胆嚢内に結石が充満している方は胆嚢の描出が十分にできないこと、落下結石(胆管内への石の落下)の問題から手術をおすすめする場合があります。
Q2.胆石を薬で溶かせますか?
➡一部のコレステロール胆石に対し胆汁酸製剤が有効です。治療に数か月かかること、薬を止めると再発する可能性が高いことが欠点です。
Q3.食事で治りますか?
➡食事で胆石が消えることは稀ですが、予防にはなります。
Q4.手術後に再発しますか?
➡胆のう摘出後の胆石は基本的に再発しませんが、胆管結石は再発の可能性があります。
9.当院での対応
当院では、消化器外科・内視鏡部門が連携し、胆石症の診療にあたっています。
【外来】画像診断と食事・生活指導
【手術】腹腔鏡手術を中心に安全性を重視
当院では腹腔鏡手術の中でも、①従来法、②単孔手術、③Hybrid NOTES手術を選択することが可能です。ぜひ、胆石外来にご相談ください。
【緊急対応】胆のう炎・胆管炎などにも24時間対応
年間症例数や手術実績などの詳細は外科紹介ページをご参照ください。
10.参考情報・リンク
【医療情報リンク】
・日本消化器病学会
・日本肝胆膵外科学会
・厚生労働省「e-ヘルスネット」
【院内リンク】
・当院外科紹介ページ
・内視鏡センター
・手術実績一覧
11.手術動画
患者様が選択できる腹腔鏡下胆嚢摘出術
胆嚢摘出単孔式腹腔鏡手術の説明
腹腔鏡下胆嚢摘出術 「Hybrid NOTES」の説明


